――ある日、街角の雑踏の中。
足元に、少し奇妙なスマートフォンが落ちているのを見つけた。
背面には、限定デザインらしき「ラーメン店オープン記念」の刻印。
そういえば最近、ネットでよく見る配信者のタベアルキ太郎が失踪したという噂があったな……。
そしてこのスマホこそ、その「伝説の店」に繋がると噂される端末だった。
そんなことをぼんやりと考えていた、その時――
拾ったスマートフォンが小さく震えた。通知だ。
2024年11月19日 アーカイブ(失踪から7日後)
警察の介入により、台東区音無町3-19-4の地下室から、火葬場より持ち出された複数の遺体が発見された。店主は遺体損壊などの容疑で逮捕。
「〇ンニク〇んこつラーメン」の真の店名は「ジンニクじんこつラーメン」であった。押収された秘伝のダシからは、昨年突然姿を消した店主の妻のDNAが検出されたという。
店主は「妻が溶けたスープを絶やすわけにはいかなかった。あれは妻そのものだった」と涙ながらに供述しているという。悲しみから始まった最初の禁忌は、いつしか引き返せない底なしの狂気へと彼を染め上げていった……。
配信者・タベアルキ太郎は無事保護されたが、事件は本当に解決したのだろうか?
一介のラーメン店主に過ぎない彼が、これほど大量の「人骨」を個人で調達し続けられたとは到底考えられない。押収された店主のメモには、ある巨大なグループ企業の名前が繰り返し記されていたという。
店主の歪んだ愛と狂気の裏で、その弱みに付け込み、彼を怪物へと仕立て上げながら人骨ビジネスで私腹を肥やす「巨大な黒幕」がいるのではないか……?
澱みのスープの背後に潜む本当の闇は、まだ暴かれていない。